アスラン、手紙を有難う。随分と時間がかかってしまったが、ようやく今私の手元に届いたところだ。 時間が経つのは本当に早いものだな。あの大戦から今までの時間が、本当にあっと言う間に過ぎ去って行ったという感じだ。あれからも、本当にいろいろな事があったが、無我夢中でここまでやって来れたのは、一重にお前の助力があってこそ、だと思う。昔の私はそれに甘えすぎて、多分、気付かないうちにお前の枷になっていたんじゃないかと、今だからそう思える。人が一緒に生きていくには、ただ凭れ合うばかりでは支え合う事にはならない、お互いが自立した上で、必要な時は手を差し延べる、それが本当に支え合う事なんじゃないかと、今ではそう思えるようになった。でもあの頃の私達はまだ余りにも幼すぎたから、そんな事にまだ気付く事は出来なかったし、また周りを見渡す余裕も、見渡せる力も、そしてそんな目も持ち合わせてはいなかったから、ただ、我武者羅に駆けることしか出来なかったんだと思う。でもそれがきっとあの頃の私達の精一杯であり、出来る事の全てであり、それを懸命にしようとしていたんだと思う。 私にとってのアスランという存在は、かつてのお前が言ったように、もう必要という言葉はとうに超えている、と思う。必要とか必要ではない、というそんな問題ではない。既に在る、という事がもう全ての前提になっているからだ。無い、という事は考慮はしていない。でもかと言ってそれでお前を縛るつもりは無いから、それだけは理解しておいて欲しい。お前が今ここに居る事を選択してくれているように、これから何を選んで行くのかは、お前の意志だ。例えそれがお互いにとって違う道であろうとも、それはそれぞれの宿命なのだ、とそう思っている。…けれどやはり、私達のこの出会いには何か深い意味があって、それがお互いの運命というものを大きく左右しているのだと言う事はやはり否定できない事実であり、そしてそれが何であるのかはまだ分からないけれど…もっとずっと先になってからそれは分かるのかも知れないな。 与えられている間には本当に気付かないものだな。私もあの時は、本当にそれを思い知った気持ちだった。当たり前のように、ずっとあるものだと思っていた、その自分のエゴというものに気付かなかったのだから。失って初めて、それに気付く事が出来たと思う…本当に感謝している。そしてそれは今もずっと変わらない。 手紙というものはいいものだな。普段、心で思っていて、なかなか口に出せない事でも、文字にすると何故か素直に書けるものなんだな…これから口で伝え難い時は、こうやって手紙で伝えないか?なかなかそれも新鮮かも知れないぞ。 「未来」を、明日を貰ったのは、寧ろ私の方だと思っている。 アスランがいなかったら、多分今の私は存在していない。 今、お前に逢いたいと思う。でも、お前は今プラントの空の下だな。…私がこんな事を言えば目を丸くするかも知れないが、本当に今、逢いたいと思う。帰って来たら、いくらでも逢えるのにな。 これからの日々を、少しでも長くお前と過ごせたらと、そう願っている。 お前と出会えて、本当に良かった。 カガリ・ユラ・アスハ 追伸:あの手紙は墓場まで持っていくつもりだから、預かっておくぞ(縁起でも無い、なんて怒るなよ) |
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<05/10/30> 手紙 ―了―