存 在最近カガリは疲れているように見える。 「無理も無い」 アスランはそう思った。 オーブという一国の運命を背負うには、18才の肩はまだ華奢すぎて、ポキン、と音をたてて折れてしまいそうだった。 出来るだけ自分が傍らにいて支えようとはしているが、そこはカガリの生来の勝気な性格の事、努めて弱気は出さない。 そのカガリが、このところ少し疲れたような表情を見せるようになった。顔色も心なし、悪い。 「カガリ、少し休め。そのままでは倒れてしまうよ。」 アスランはカガリに忠告するが、 「大丈夫。」 と本人は取り合わない。 「お父様の意志を継ぐ」その強い意志だけが、今の彼女を突き動かしていた。 そんなある日、廊下の端にカガリがしゃがみ込む。 「カガリ!」 アスランが駆け寄り、支える。 「あ、大丈夫だ、ちょっと眩暈がしただけ…」 弱々しく笑うその顔は、とても大丈夫な顔色ではない。 アスランは抱きかかえ、仮眠室へと運ぶとベッドにカガリを横たえた。 「大丈夫か?」 「うん、ごめん。」 「水、飲む?」 カガリは頷く。 水の入ったコップを持ってきたアスランは、カガリが飲みやすいように抱き起こし支えてやる。 「ありがとう。」 支えられたまま水を飲み、カガリは息をついた。 「カガリ、あまり気負うな。キサカさんも心配していた。」 アスランは優しく言い聞かせるように言った。 「うん…ごめん…わかってる。けど…」 みんなが心配してくれている事はよくわかっている。しかし、一刻も早くオーブを建て直したい、その気持ちがどうしてもカガリを追い立てた。真っ直ぐすぎる性格は、時として諸刃の剣となり、カガリ自身を傷付ける。 そんなカガリを十分すぎるほどわかっているアスランは、更に優しく言った。 「1人で何もかも背負おうとするのはカガリの悪い癖だ。考えたってどうしようもない事もある。上手くいかない時もある。でも、全てまだこれからじゃないか。急ぐ事は無いんだよ。それに、キサカさんもいる。みんなもいる。それから…。」 アスランは更に優しい瞳になって、カガリの瞳を覗き込む。 「それから、何の為に俺が側にいるかわかってる?」 カガリはハッとしてアスランを見る。 「もっと甘えてもいいんだよ、カガリ。」 アスランは微笑んだ。そして、空いていたもう一方の手を優しくカガリの頭の後ろに添え、そっと抱き寄せた。 あまりにも甘く優しすぎたその行為は、カガリの張り詰めた緊張を溶かすには十分すぎる程だった。 カガリはアスランの胸に崩れ落ちた。 「アスランがいてくれて、良かった。」 心が痛くなりそうなくらい、カガリはそう思った。 <2004.11.14> |