そして、蜜室







「カガリ、ちゃんとこっち見て。」
カガリは聞こえないかのように、顔をそむけたままだ。
「じゃあ、もっと明るくするよ?」
「あ、ダメだ、バカ!」
「やっとこっちを向いた。」
カガリの真上から、アスランが笑う。
「は……。」
またしても、コイツは…。
カガリはまた顔をそむけようとしたが、今度はアスランの両手にしっかりと阻まれた。
「見たいから、カガリの『そういう』顔。」
「あ、見るなっ、バカ!」
カガリは両手でアスランの目を覆う。
すると、親指の先がアスランの口にかかり、アスランがそれを口に含んだ。
「あっ…。」
ゾクリ、と経験した事の無い感覚が指先から這い上る。
その拍子に目を覆っていた手が外れ、アスランとしっかりと目が合ってしまった。
離そうとした手を掴んで引き戻され、指は再びアスランの口に戻る。
「あっ、…やだ、それ!」
ゾクリ、と這い上る。
「でも、その顔が見たい。」
そう言うと、アスランは再び口に含み、ゆっくりと溶かし始めた。
「はっ…くっ…。」
ゾクゾクが止まらない。
そして別の場所からも這い上ってくる、痛みともわからないまだ慣れない感覚と相まって、カガリは泣きそうな顔になる。
が、まだ儚い抵抗を続けて歯を食いしばっている。
「かわいい。」
アスランが言う。
「お前のせいだろ、バカ…!」
そういうとカガリは手を振り解き、アスランの首に廻して自分の顔の横に引寄せた。
「見ないなら、いい…。」
と耳元で、苦しそうな吐息と共に吐き出した。


<2005.01.01>