邂 逅(注:設定完全無視、完全捏造。サラッと読み流しましょう) 月の幼年学校の卒業式を数ヵ月後に控えた或る日。 「アスラン!」 と駆け寄って来るのは、シャモアの髪にアメジストの瞳をした、まだあどけない顔の少年だった。 「何だ、キラ?」 アスランと呼ばれた少年が振り返る。 プルシアンブルーの髪にエメラルドグリーンの瞳をしたその少年もまた、あどけない。 「ねえ。」 語りかけるキラとアスランは、肩を並べて教室を結ぶ通路を歩き始める。 「今度の休暇には家に帰るの?」 キラがそう訊ねると、アスランは少し妙な間を置いて 「…ああ、うん。」 と返事を返す。 顔の表情が何だかいつもと違ってそわそわとしている事に気付いたキラは、アスランの顔を覗き込んで更に訊ねる。 「何?どうしたの?」 「え?」 アスランは一瞬ギクリとした顔をして、そして横目でキラをチラリと見る。 「何って……何が?」 明らかに「普通ではない」事を態度で示している自分をどうする事も出来ず、どんどん墓穴を掘っていくアスランはキラの好奇の目の前で益々うろたえる。 「だ・か・ら。本当は、一体何があるの?」 キラに袖を引っ張られて、ついに観念したのか、アスランは困惑した表情で白状する。 「いや…ちょっと人に会う約束が…あって…。」 そう言ったアスランの顔は、心なしかほんのりと紅い。 「……あっ……。」 それを見たキラはピンときたのか、ニンマリとして 「女の子…?」 と訊ねる。 「う、うん…。」 そう言ったアスランの顔は益々紅くなって、それを隠す為か横を向いて無意識に頭を掻く。 「あ、もしかして、前に言ってた婚姻統制の…?」 「ああ、……うん。」 先日、父から正式に婚約が決まった事を知らされたアスランだったが、相手の事はまだよく知らなかった。 「へえー」 と益々目を輝かせたキラは、アスランの前に廻りこんで更に質問の矢を浴びせかける。 「ねえ、どんな娘なの?写真は?会ったことはあるの?」 そんなキラの言葉に、満更でも無い様子のアスランは、照れた表情で答え返す。 「いや、まだ会った事は無いし、写真も見てないよ。」 そのアスランの言葉に一瞬押し黙ったキラは、 「ふーん。」 と言ってから 「まだ会った事も無いのに、結婚するって決められちゃうの?」 と不思議そうな顔をした。 「え…?」 それを聞いてアスランは言い淀む。 「いや、それは…。」 今まで自分は、それが定められた事であると、その敷かれたレールに基づいて暮らしていくのが普通なのだと、信じて疑った事は無かった。 しかし、今のキラの言葉にふと考える。 定められた相手以外の女性との結婚。 そんな事が、自分の将来にあるとは思えなかった。 「また今度、紹介してよ。」 無邪気に微笑むキラにアスランも少し照れながら答える。 「ああ、うん。今度、な。」 待ち受ける数奇な運命も、過酷な未来も、今はまだ時の彼方。 何も知らない少年達は、未来に胸弾ませながら笑い合う。 「でもアスランって、女の子の扱い方、知ってるの?」 「そんなの、一緒にお茶飲んで話すだけだろ?」 「んー…まあ…。」 親友の初デートの姿が目に浮かぶようで、キラは内心苦笑いする。 「まあ、頑張ってよ。」 そんなキラの励ましの言葉に、何を頑張るのかよくわからないまま、アスランは「うん」と頷いて、二人はまた違う話題に花を咲かせながら歩いていく。 その励ました親友の相手が、将来自分に深く関わってくるのだという事を、勿論キラは知る由も無い 数日後。 休暇で帰省する筈だったアスランは、月にいた。 キラの卒業制作が間に合いそうもないので、手伝ってやっているうちに、結局帰れなくなってしまったのだ。 兄貴分のアスランとしては、キラを放っておけなかったという事もあるのだが、本当は婚約者に会うという事を心のどこかで躊躇っていたのかもしれない。何となくキラの言葉がアスランの胸に残っていた。 そんな諸々の事情から、アスランとラクスが初めて言葉を交わすのは、もう少し後の話になる。 □ □ □ ささ、笑って水に流しましょう! ☆言い訳 ↓ @コミックス・CDを持っていないので、月の幼年学校時代の事をよく知らない。 Aアスランとラクスの婚約がいつ決まったのか知らない。 Bその婚約は、親同士が決めたのかもしれないが、一応『婚姻統制』に基づいているものと勝手に解釈。 Cその『婚姻統制』の規定について、いまいち(ていうか全然)よくわからない。 Dアスランとラクスが昔から面識があったのかどうかよくわからない。 Eキラが初デートの心配をしていたが、実際にはラクスが暴走気味だったらしいので、アスランのほうが大変だったらしい。 こんな二人だが、もし結婚していたら案外幸せな家庭を築いていたかもしれない。でも暴走するラクスにアスランが疲れて 浮気…なんて事にもなり兼ねない。(押しに弱い彼だけに) Fキラの謎の卒業制作。一体、何を作っていたのだろう。そんな事で親友の人生の大切な日を奪ってしまっていいのだろうか。 G卒業してから二人の交友は無かったのだろうか。アスランは写真を貼るほど思っていたみたいだが…。あったとしたら、婚約者 の事なんかも普通は言ってる筈。結構クールな仲? H結局、何が言いたかったのかと言うと、アスランとキラにこういう会話をさせてみたかっただけ。戦前の二人って何のしこりも無 くて、微笑ましそうだったから。実際、ちょっと楽しかった♪(自己満足) <2005.05.07> |