2005.04.07日記より 花艶夜話 「綺麗だろう?」 薄桃色の淡い塊が、下弦の細い月の光に照らされてボウッと浮かび上がっていた。 真下まで行って、やっとそれが一本の木に咲く花の群れなのだと言う事を、アスランは知った。 「゛桜゛って言うんだ。」 カガリは振り返ってそう言った。 綺麗……と言うよりは、まるで夜の闇に浮かぶ艶かしい魔物のようだ、とアスランは思う。見ている者を吸い込んでしまうかのような、危うい美しさ…。 時折吹く微かな風に揺らされて、その度に身を散らすように花弁がハラハラと舞った。 「…私が死んだらその灰を、桜の木の元に蒔いて欲しい。」 「……え?」 「そうしたらその花が咲く毎に、みんなが私の事を思い出すから…。」 驚いて見るアスランに、カガリは 「…ていうセリフがあったな。前読んだ本の中に。」 そう言って静かに笑った。 ザワッという音と共に、風に吹き飛ばされた花弁が吹雪のように舞い、一瞬アスランはカガリの姿を見失ったように思えて、急いで手を延ばす。 すると、闇の中で暖かい確かな息遣いの感触がその手の先に触れ、アスランはホッと胸を撫で下ろす。 そしてそれと同時に、その両腕を後ろからカガリの首に回して緩く抱き締め、顔をそっと首の辺りに埋める。 「……アスラン?」 「……俺より先になんか逝くな…。」 薄桃色の花吹雪。 悲しいまでの美しさは、暫し二人を闇に閉ざす。 それは儚い夢の時間…。 よく考えれば、アスランとキラの月の幼年学校での別れのシーン(?)に桜が舞ってましたね… |