2005/08/08 日記より






白い喉元が小さな音をたてながら一定の間隔で動く様は、まるでそこに何かの別な生き物が蠢いているような錯覚を思わせる。ただの生き物では無い。…それは妖艶な、見るものを惹きつけて止まない、思わず触れてしまいたくなる程の艶やかで眩惑的でさえある魔力を秘めた生き物。その剥き出しの白過ぎる肌に喰らい付いてくれと言わんばかりに、無意識に要求する生き物。
     直視するのでさえもう限界だ。
あの無意識下の要求は、今の自分には酷く耐え難い。
これ以上の忍耐は、強い毒を煽るようなものだ。

「ん?」

白い生き物の蠢きが止まる。

「何だ、お前も飲みたいのか?」

スッと目の前に差し出されたペットボトル。

「今じっと見てただろ。ほら。」

いや見ていたのは…。まあいい。
飲みかけのそれを受け取ると、ボトルの口の部分がしっとりと濡れて雫が滴っている。
     毒だ。
何よりも強い、毒だ。
そうと知りながら、自ら望むようにその毒を喉の奥に流し込む。
喉がじりじりと焼けそうだ。

「熱い…。」
「ああ、本当に暑いな。」

眩暈がするのは多分全身に毒が回り始めたせいだろう。
…だが自分で望んだのだ。
耐えるくらいなら毒で体を焼かれたほうがいい。
そのほうが本望だ。
いや、むしろそれを選んだのだ。

どちらにしても今の俺にとって「毒」だと言う事には変わりは無い。

それならば…。

ならば、いっそ蝕ばんでくれ、と心密かに願うのだ―。