wed拍手過去ログ 05/06/02〜05/06/20



砂時計



「例えば、私達はこの砂の一粒だった。」
と、カガリは手の平にすくった砂をサラリと浜に戻したりまたすくい上げたりの動作をずっと繰り返す。
「その一粒が出会うには、気が遠くなる程の確率が必要だ。」
そう言うと、また砂を拾う。
「何だと思う?」
砂をアスランの目の前で、指で作った細い輪からまるで時を計るかのように少しずつ落下させて行く。
その仕草が、砂が零れ落ちるまでに回答を差し出せと言わんばかりでアスランは少したじろぐ。
「何って…。」
砂が次々と風に浚われて行く。
「必然だろう。」
そう言った時、最後の一粒がゆっくりと落ちた。音も無く。
そしてその手を徐々に開くように、カガリの顔にも笑みが広がっていく。
「良かった。」
そう言うと、立ち上がる。
「『運命』だなんて言われたら、どうしようかと思った。」
笑いながら、手を差し出す。
「『偶然』だって言われたほうが、まだいいからな。」
アスランが、手を取る。
「…嬉しい。」
カガリが含羞んで、その手を引き上げる。
そして黙ってそのまま手を繋ぐ。
絡ませた手に、お互いの体温と砂のザラついて乾いた潮の匂いを感じとりながら、どこまでも果てしなく白く続いているように思われる時の道を、また、歩き始めた。

(2005.06.02)